ノモス・グラスヒュッテ/タンジェント
- 2023/10/02 11:30
- カテゴリー:時計
1992年のリリース以来、ドイツ時計のアイコンとなった「タンジェント」。簡潔なデザインと、優れたムーブメントの組み合わせは、このモデルに驚くほど長いライフサイクルを与えることとなった。ではなぜ、創業間もないノモスが、タンジェントのような傑作を作れたのか?そしてなぜ、ノモスはマニュファクチュールに脱皮しようと考えたのか? 代表作であるタンジェントの歩みから、ノモスというブランドの成り立ちと、その驚くべき進化をひもときたい。
タンジェント
星武志:写真 Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2023年7月号掲載記事]
TANGENTE NEOMATIC
自動巻き搭載のクラシックサイズ
2015年初出。新型自動巻きを搭載した自動巻きモデルである。直径39mmと41mmもあるが、バランスが良いのはやはり35mmか。自動巻き(Cal. DUW 3001)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。SSケース(直径35mm、厚さ6.9mm)。3気圧防水。48万9500円(税込み)。 2005年に初の自動巻きであるイプシロンを完成させたノモス。薄い手巻きに自動巻き機構を重ねるという設計が極めて賢明だったが、弱い巻き上げを補うため、イプシロンのローターは大きく重くならざるを得なかった。自動巻き機構に、耐久性は高いが、不動作角の大きなスイッチングロッカーを採用したためである。結果、イプシロンの直径は31mm、厚さは4.3mmに膨れ上がった。対してノモスは、全く新しい自動巻きの開発に取り組み、15年には薄型自動巻きのDUW 3001をリリースした。その直径は28.8mm、厚さは3.2mm。最初に採用したのは、15年の「タンジェントネオマティック 1stエディション」だった。レギュラー化は翌年のことである。
形と色を強調するようになったノモス。タンジェントも例外ではなく、毎年のようにカラーバリエーションを加えるようになった。本作の文字盤は、ラッカー仕上げのミッドナイトブルー。その上に、シルバーとスカイブルーの印字を施してある。周囲にビビリの出やすいシルバーの印字だが、質は比較的良好だ。 手巻きに比べて大きく厚いムーブメントを、ほぼ同サイズにまとめられた理由は、新しいケース構造にあった。タンジェント スポーツが採用した、ムーブメントの中枠をOリングで押さえるケース構造は、耐衝撃性を高めるだけでなく、ケースを薄くすることにも寄与した。仮に従来に同じ、中枠をスプリングで押さえるタイプの裏蓋ならば、タンジェントのケースは、重い自動巻きを支えられなかったのではないか。
ケースサイド。造形はタンジェントそのままだが、ラグを詰めることで、時計の全長は手巻きの45mmから43mmとやや短くなった。個人的には歓迎すべき改良である。 ディテールも大きく進化した。見た目は従来に同じだが、ラグを短くすることで、取り回しが改善されたのである。また、ケースの磨きや全体的な仕上げの質も、かつてのモデルに比べて改善されている。 30年以上にわたってノモスのアイコンであり続けるタンジェント。その自動巻き版であるネオマティックは、一見中身が変わっただけに見える。しかし、優れた自社製ムーブメントを巧みに収めたタンジェント ネオマティックとは、時計メーカーとしてのノモスの成熟を体現したモデルなのである。
2015年初出。新型自動巻きを搭載した自動巻きモデルである。直径39mmと41mmもあるが、バランスが良いのはやはり35mmか。自動巻き(Cal. DUW 3001)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。SSケース(直径35mm、厚さ6.9mm)。3気圧防水。48万9500円(税込み)。 2005年に初の自動巻きであるイプシロンを完成させたノモス。薄い手巻きに自動巻き機構を重ねるという設計が極めて賢明だったが、弱い巻き上げを補うため、イプシロンのローターは大きく重くならざるを得なかった。自動巻き機構に、耐久性は高いが、不動作角の大きなスイッチングロッカーを採用したためである。結果、イプシロンの直径は31mm、厚さは4.3mmに膨れ上がった。対してノモスは、全く新しい自動巻きの開発に取り組み、15年には薄型自動巻きのDUW 3001をリリースした。その直径は28.8mm、厚さは3.2mm。最初に採用したのは、15年の「タンジェントネオマティック 1stエディション」だった。レギュラー化は翌年のことである。
形と色を強調するようになったノモス。タンジェントも例外ではなく、毎年のようにカラーバリエーションを加えるようになった。本作の文字盤は、ラッカー仕上げのミッドナイトブルー。その上に、シルバーとスカイブルーの印字を施してある。周囲にビビリの出やすいシルバーの印字だが、質は比較的良好だ。 手巻きに比べて大きく厚いムーブメントを、ほぼ同サイズにまとめられた理由は、新しいケース構造にあった。タンジェント スポーツが採用した、ムーブメントの中枠をOリングで押さえるケース構造は、耐衝撃性を高めるだけでなく、ケースを薄くすることにも寄与した。仮に従来に同じ、中枠をスプリングで押さえるタイプの裏蓋ならば、タンジェントのケースは、重い自動巻きを支えられなかったのではないか。
ケースサイド。造形はタンジェントそのままだが、ラグを詰めることで、時計の全長は手巻きの45mmから43mmとやや短くなった。個人的には歓迎すべき改良である。 ディテールも大きく進化した。見た目は従来に同じだが、ラグを短くすることで、取り回しが改善されたのである。また、ケースの磨きや全体的な仕上げの質も、かつてのモデルに比べて改善されている。 30年以上にわたってノモスのアイコンであり続けるタンジェント。その自動巻き版であるネオマティックは、一見中身が変わっただけに見える。しかし、優れた自社製ムーブメントを巧みに収めたタンジェント ネオマティックとは、時計メーカーとしてのノモスの成熟を体現したモデルなのである。